しかも、数学の達人たちは、なににもまして、絵画や音楽と同様な喜びを数学に対して見いだすのである。彼らは数と形との精妙な調和を嘆賞し、新しい発見によって思いがけない見通しがひらけるとき、感に打たれる。このようにして感ずる喜びは、感覚とは何らかかわりがないにもせよ、審美的な性格を持っているものではないだろうか。この喜びを心ゆくまで味わうような肌合いを持った人々は、きわめて少数の選ばれた人々だけに過ぎない。それにはちがいないが、しかし、それはもっとも高貴な芸術についても同じことではないだろうか。
数学はそれ自身のために研究される価値があり、また、物理学に応用され得ない理論も、応用され得るものと同様に、研究すべきだ、と言うに躊躇しないのは以上のような理由からなのである。
数学はそれ自身のために研究される価値があり、また、物理学に応用され得ない理論も、応用され得るものと同様に、研究すべきだ、と言うに躊躇しないのは以上のような理由からなのである。
Henri Poincaré著 『科学の価値』 吉田洋一訳(岩波文庫)


